第35回 減価償却

前回の一言で紹介した日本版「SOX法」の第2回目のセミナーが東京でありました。平成18年11月21日に企業会計審議会内部統制部会が「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」-公開草案―を公表しましたが、実際適用するクライアントの準備作業はこれからが本番でしょう。

さて、今回は平成19年度の税制改正に関する話です。会計の仕事をしている人であれば減価償却という言葉を聞いたことがあると思います。建物・備品等の固定資産は、1年以上に渡って使用されるので、その取得価格をその取得した事業年度だけの費用で計上すると、次年度以降にもその固定資産が使用されるのにその経費が計上されなくなります。そのため損益計算を適正にするため会計上は固定資産の取得価格を、固定資産の耐用年数で按分し減価償却費として計上します。税制改正ではその減価償却費について2つの改正が行われる予定です。

(1)償却可能限度額の撤廃
償却できる金額は、取得価格の全額ではありません。耐用年数が経過しても取得価格の5%は処分価格として残しておくので、償却可能限度額は取得価格の95%に据え置かれていました。実際には、パソコン等の固定資産を処分すると、産廃の費用がかかることを考えれば取得価格の5%の簿価を残すという合理的な理由はありません。むしろ資産の除却時に、一時的に損失計上が余儀なくされることから企業の設備更新の足枷にもなっていました。

(2)法定耐用年数の短縮
耐用年数は、その固定資産毎に通常一般的に使用可能な期間を採用すべきですが、その判断を会社の自由に任せたのでは、課税の公平が保てないので税法では固定資産の種類毎に詳細な法定耐用年数を設けています。法定耐用年数は、これまでも特に技術革新の激しい半導体や液晶の生産設備等を中心に見直されてきましたが、更なる技術の進歩に対応するため法定耐用年数を短縮する可能性があります。これにより償却期間が短くなれば1年当たりの減価償却費が増え、設備投資をした後の法人税負担が少なくて済みます。新規投資の多い企業ほど税負担を減らす効果が大きく、企業の投資意欲が高まると予想されます。

ただし、実際の使用可能な期間と法定耐用年数との間にはかなりの差があります。たとえば、自動車(乗用車)の法定耐用年数は6年ですが、日本の自動車はメンテナンスを十分行えば、20万キロ走ることを考えれば6年を超えても使用可能です。また、貨物トラックの法定耐用年数は4年ですが、運送業者でトラックを4年で買い換えていたのでは商売になりません、10年以上使用するのが一般的でしょう。今回の改正は企業の損益に与える影響が大きいので、どのような改正内容になるのか十分に検討しなければなりません。

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