第33回 保険

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 早くも今年も9月末となりました。不定期な更新となってしまい申し訳ございません。今年あったサッカーのワールドカップも日本は(予想通り?)一次リーグ敗退となり改めて世界との実力の差を思い知らされる結果となりました。

 さて、先日の新聞に生命保険各社が来春、保険料を大幅に見直す可能性が高まっているとの記事が載っていました。保険会社は保険料を受取り、これを運用し、利殖し、その中から保険金と人件費などいろいろな経費を払っていく仕組みになっています。そして保険料で保険金と経費を賄い、収支のバランスをとっていくということを「収支相等の原則」といっています。生保の保険料は生保の経営に大きく影響するので、その計算は、以下の基礎データを過去の統計データ等に基づき見積もっています。

 「死亡率」……年齢や性別ごとに、一年間に平均してどれだけの人が死亡するかを示す率
「予定利率」…生保が契約者に支払を約束した利率
「経費率」……生保が会社を運営するためにあらかじめ必要とする費用の率

 上記の実際の数値は予定した比率と相違するため、その差額は「死差益」、「利差益」「費差益」として生保の利益に影響します。

 今回の見直しの対象になるのは、死亡率です。日本人の実際の死亡率は、厚生労働省が人口動態統計などから算出し、毎年「簡易生命表」として公表しています。一方生保はこれとは別に業界独自の死亡率を「生保標準生命表」として1996年に作成し、死亡率の計算を行っています。この「生命標準生命表」は予期せぬ事態により死亡者が膨らむ事態を予想し死亡率を現実よりも高めに設定していることに加え、高齢化が急速に加速しているため現実の死亡率が低下したことにより乖離が大幅に広がっていました。男女とも死亡率の低下が顕著なのは60歳以上の高齢層で現行の死亡率と約2割の差異がありました。逆に男性の40歳代は死亡率が5%増加しているので、高齢層に比べて差異が小さく保険料値下げは年齢により格差が生じると思われます。また死亡率の低下は、長生きが進むほど支払額が増加する可能性がある医療保険や年金保険の保険料の値上要因になります。ただ、医療保険は、生保の間で競争が激化しているため各社とも目立った値上げはしにくく、生保の商品開発力や価格戦略の差が出るきっかけになる可能性があります。

 本来、生保の運営は不特定多数から保険料を集めて運営されるため、一般に明確に開示する必要がありますが、保険会社の保険料算定の基礎データは外部に開示される機会はほとんどありませんでした。そのため死亡率の乖離により保険会社に利益が発生していながら、死亡率が11年間も変更されず放置される結果になりました。保険会社も保険契約の締結時だけでなく定期的に自社の経営状況を積極的に開示する姿勢が問われています。