第29回 遺言のすすめ

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 もう6月末となり入梅し連日蒸し暑い日が続いています。今年の夏も暑くなるのでしょうか。

 さて、長らく大関として活躍した二子山親方の葬儀で露見した花田家の確執は、有名人であるがゆえにワイドショー等で面白おかしく取り上げられました。誰が喪主になるかは、その後の遺産相続の際に主導権を握りたいという思惑が絡むので簡単には解決しない問題です。この騒ぎをひとごとと思えない人も少なくないはず。これほどもめる前に打つ手はないものでしょうか。

 戦前の家制度では当主の長男が全財産を相続する建前であり、葬儀はそのお披露目の場でしたが、戦後民法が変わり遺産も跡継ぎの家督相続から兄弟で平等に相続する均分相続になり、核家族化、持ち家指向とともに、各相続人の権利意識も高まり、同時に、土地の値上がりで遺産の価値が増えてきたために、花田家のような相続をめぐる骨肉の争いがしばしば起こる事になります。

 民法は各相続人の相続の割合(法定相続分)を定めていますが、誰がどの財産を相続するか(遺産分割)は、当然のことながら定めていません。それは各相続人が相談して決める(遺産分割協議)、相談がまとまらなければ裁判で決めることになります。だれでも、少しでも良い物をとりたいのは人情です。「兄弟は他人のはじまり」とはよくいったもので、その兄弟に、それぞれ配偶者という外野がついているのですから、その始末が悪く、なかなか協議がまとまりません。

 このような相続争いを防ぐには、遺言が最も有効です。遺言で財産全部を相続人に割り当てておけば、争いの余地が少なくなります。また遺言により内縁の妻のような法定相続人以外の人にも財産を残すことができます。

 遺言は、公証役場で公正証書遺言として作成するのが最も安全確実ですが、その公正証書遺言には、「付言事項」という、遺産配分の理由や、家訓、家族への感謝の気持ちなど「思い」を書き加えられます。公証人は、公序良俗に反することでない限り、遺言者の言葉どうりに付言事項を書き加えてくれますし、希望があれば公正証書に自筆で綴った文章そのものを添付することができます。

 今回の花田家の場合も、生前から兄弟の確執が騒がれており、死亡後兄弟で遺産争いが予想されるのであれば遺言が必要だったのかもしれません。その遺言の中に兄弟へのメッセージ等をいれておけば今のような争いは少しでも緩和されたでしょう。

 相続の仕事をしていると、相続で貰った財産は、相続税の納付又は持ちなれない大金を持った為に、浪費しあっという間に無くなってしまうことがあります。また相続争いにより兄弟の仲が悪くなったような場合は、何も財産を残さないのが家族への本当の思いやりなのかもしれません。