第25回 西武鉄道(株)

早くも11月となり木枯らしが吹いてずいぶん寒くなりました。今年もカレンダーの枚数は残すところ2枚となり、ちらほら忘年会の案内が来るようになりました。

さて、西武鉄道といえば、今年の野球の日本シリーズで優勝した西武ライオンズのグループ会社ですが、その会社の発行株式をコクドが個人名義で所有していた問題で、 東京証券取引所(東証)が西武鉄道の株式の上場を平成16年12月17日で廃止することになりました。これにより西武鉄道の株式は市場で売買できなくなります。コクドが所有していた株式は一般的には「名義株」と呼ばれ、 実際の株購入資金の負担者と株主名簿の株主の名前が相違する株式と言うことができます。以前の商法は、株式会社の設立に当たり7名以上の株主数が必要だったので、名義だけ借りて株式会社を設立することが多くありました。ただしそれも中小企業の場合がほとんどで株式を上場している会社が1億株以上の株式(発行済み株式の約25%)を名義株として所有していたなど前代未聞のことです。

現行の東証の上場廃止基準の理由は16あり、1号から15号までは破産、再生・更正手続きの開始、株主数の不足、大株主比率が80%超過など具体的に個別の事項を列挙しています。 今回東証が西武鉄道に適用した上場廃止基準は、11号の「上場会社が財務諸表等又は中間財務諸表に「虚偽記載」を行い、かつ、その影響が重大であると認めた場合」及び16号の 「その他公益又は投資家保護のため、上場廃止を適当と認めた場合」でした。コクドが実質的に所有する個人名義の株式を加えると大株主の比率は80%を超えることになり実際市場で売買可能な株式数は20%にも満たなかったことになります。これは我々が投資を行う際に参考にする情報に重大な誤りがあったことを意味しており、上場廃止はやむをえないと思われます。

また、所有していた名義株をコクドが今年の8月以降、複数の会社に売却していたので、その株式を購入していた会社から買い戻し請求を受けることになり、これも今後の展開が不透明です。株式を購入していた会社も、自社株主から、「なぜ上場廃止となる株式を購入したのか」という 株主代表訴訟を恐れてコクドに買い戻し請求を行ったものと思われます。

最近のアメリカのエンロン事件でも情報開示の適正性が問題となり大幅な法律の改正がありました、今回の西武鉄道の事件を受けて東証も株式を上場している会社に対して自社の有価証券報告書に誤りが無いかを1ヶ月以内に点検させ、その上で有価証券報告書が適正に作成されている旨の「宣誓」を義務づけました。さらに虚偽記載が見つかれば課徴金を課す制度も検討中とのことです。

税務の仕事をしているとクライアントの中には自分の会社の株主が誰なのかわからない人もいます。この機会に自分の会社の株主を再度確認して見るのも良いのではないでしょうか?

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