第23回 包括根保証

お待たせいたしました。3月に22回目の記事を掲載してから暫く間があいてしまいました。4月は急に会社の自己破産の仕事があり、5月は3月決算の締め、そして6月は民事再生の仕事が舞込んでしまい、その後暫く連載しないうちにあっという間に9月となってしまいました。

さて、破産や民事再生の仕事を行うと、いつも問題になるのが、経営者の保証の問題です。本来、商法上は、会社は、法人と定義され、個人の自然人とは区別されます。法人それ自体が、権利・義務の主体となることができるので、資金の必要があれば、金融機関から独自に借入を行なうこともできます。この借入は、会社の借金であり、経営を委託されている経営者は返済の義務はありません。ただし、金融機関は資金を貸すとき、会社が返済できなくなるリスクを避けるため、担保や保証を求めるのが一般的です。保証には、特定の債務だけを保証する普通の保証のほか、限度額、期間を定めない「包括根保証」を求める場合が多く、特に中小企業では、会社の資産(主に土地)と個人の資産が混在している場合が多いので、担保があったとしても、金融機関は、経営者に会社の借入金に対する個人保証を求め、それが包括根保証の場合も多く見られます。このため、有限責任であるはずの中小企業の経営者が、会社の借入金に対しても責任を負わなければならない構図が出来上がっているのです。包括根保証は、会社が倒産すると保証を行っている経営者は保証に基づいて自分の私財を全て投げ打って、借金の弁済に充当し、場合によっては自己破産を申請するので別の事業を起業する場合の障害になってしまいます。また、保証人が第三者の場合は、保証人が知らない間に経営者が借金を増やし、過度な債務を背負う可能性があるとの指摘がありました。

平成16年9月8日に、法相の諮問機関である法制審議会は、包括根保証を禁止する「保証制度の見直しに関する要綱」をまとめました。

要綱では、

(1)根保証契約は書面で行なわなければ無効。
(2)限度額を定めない契約は無効。
(3)保証期間は金融機関と保証人が合意した場合、5年以内。

と定めています。

今回の見直しを先取りする形で、金融機関は、融資に際して金利は上乗せするが、経営者個人の保証を免除する商品や、無担保で第三者の保証を必要としない商品を市場に送り出しています。包括根保証は、融資に際して、一括して経営者又は第三者の保証を得る制度であり、金融機関が融資の度に保証の手続きを行う煩わしさを避けるための制度でした。今後、金融機関は、融資の実行に当たって、融資先の経営内容を絶えずモニタリングし債権を保全することが当然求められます。

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