第14回 社会保険
さて、4月になると、世間では新年度ということで、新しい制度等が適用されるのですが、多くのサラリーマン世帯でも4月から厚生年金等の負担額が増えることになります。すべてのサラリーマンが支払わなければならない社会保険料は厚生年金、健康保険と雇用保険です。このうち4月から保険料の仕組みが変わるのは厚生年金と健康保険です。年収を基準に保険料を徴収する「総報酬制」がともに導入され、ほとんどの人で年間負担額が変わります。これまで保険料は主に毎月の給与から差引かれ、ボーナス時の負担額はわずかでした。今後は、月給とボーナスに同じ保険料の率が適用され、年収のうちボーナスでの支給割合が多い人ほど年間の保険料負担額が大きくなるのが「総報酬制」の特徴です。
実際の保険料負担はどのようになるのでしょうか。すべての加入者に同じ保険料がかかる厚生年金の場合、保険料は本人と勤務先が半額ずつ負担しますが、本人分だけで計算すると、これまで月給が8.675%、ボーナスが0.5%だった保険料率が、4月からは年収の6.79%となります。厚生労働省の年金課によればボーナスを月収の3.6ヶ月分もらっている人の負担額が変わらないように設定してあり、ボーナスがこれより少なければ保険料負担額は減少し、多ければ増加します。
複雑なのは健康保険です。大手企業などは、会社別または業種別に健康保険組合を設けており、近年は、保険財政の悪化から解散する組合が続出しています。このように加入している健康保険組合の財政事情により保険料の率が違っているので、変更の影響額を算定するには、加入している健康保険組合の提示する保険料の率を確認しなければなりません。中小企業に勤める人が多い社会保険庁が運営する「政府管掌健康保険」の場合、これまで月給が4.25%、ボーナスが0.3%でしたが、4月からは年収の4.1%となります。このようにボーナスからは社会保険料が約1割差引かれることになるので、住宅ローンにボーナス払いを利用している人は今後ボーナスの手取額を確認しなければなりません。
ただ、中期的に見ると2025年には社会保険料の負担額を年収の約2割にしないと現在の年金と保険の財政は維持できないとの試算もあります。少子高齢化が進む中で、このままの支給水準を維持したのでは、財政が破綻するのは当然であり、支給水準の引き下げを中心にした抜本的な改革が必要になります。
会社によっては、ボーナスの手取額が減るだけでなく、ボーナス自体支給されない会社も多く、やりくりに窮している家計も多いと思います。デフレ下で物の値段も下落していますが、それ以上に収入が減ったのではやりくりがつきません。今後はライフスタイルの変更を含めたライフプランの見直しが必要かもしれません。