第12回 うつくしま県民債

連日、寒い日が続いています。今年は、インフルエンザの流行も例年に無く早いようです。

さて、昨日のニュースで、福島県が、住民参加型市場公募債を「うつくしま県民債」として、5月下旬に発行することを決めました。従来から県も国の国債と同じように歳入と歳出との差額を県債の発行で補っていましたが、今回の「うつくしま県民債」は、厳しい財政状況の中で県民の県政への一層の参画を促すため、その資金の使途を県立高校の校舎の整備に使用するようです。購入できるのは、県民や県内に営業拠点のある法人・団体ですが、利率を最近発行された国債の利率を若干上回るよう0.3%程度で調整するようです。都道府県の歳入は基本的に税金です。最近の経済状況から法人の内、7割近くが赤字申告のため、都道府県の歳入も減少傾向にあります。市町村も、同じように歳入が減少していますが、あまり景気に左右されない固定資産税を財源として持っているので、比較的税収が安定しています。そのため都道府県も事業税を利益に課税する方法から、資本金・従業員数・売上高等をベースにした「外形標準課税」に変更することに積極的なのです。

「うつくしま県民債」は、県としては初めてのことであり、がむしゃらに引き受け先を探すでしょうが、今後も全て引き受けが行われるかどうかは、県の財政状況にかかっています。国や県が発行している債券だから大丈夫というのは危ないでしょう。実際、発行元が財政破綻を起こせば、アルゼンチン国債のように紙くずと同じになってしますのです。

株式や債券を発行している企業は、IR(インベスター・リレーション)活動を積極的に行っています。これは法的に定められたディスクロージャー制度に基づく開示以外に、企業が自主的な判断で行う情報の開示です。IRは、あくまでも企業による任意の情報開示ですから、具体的内容や実際に担当する組織などは、企業によってまちまちなのが現状です。一般的なものとしては、マスコミ、機関投資家、アナリスト、格付機関等に対する業績や新製品の説明等がそれにあたります。また、IRの場合、ディスクロージャー制度では制限がある企業の将来予想といったことも盛り込むことが可能になりますから、企業の主張をPRする効果も期待できます。一方、アナリスト等は企業の内容について相当詳しく勉強しているので、将来のキャッシュフローの状況などは実績に基づき詳細に解説しないと開示に消極的だとか、経営者の能力に問題があるとして株式を売り込まれたりします。

さて、国や地方公共団体のIR活動については、企業と比較すると、まだまだ足りないような気がします。近年、貸借対照表の開示を行う地方公共団体も見られますが、基本は、歳入と歳出をベースにした収支決算であり、貸借対照表や損益計算書の作成も求められていません。地方公共団体も債券の発行を継続するのであれば、事業別の採算の把握を行いながら、IR活動を通じて、積極的に財政状況と経営成績の開示を行わなければ投資家か見放されてしまいます。

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