第30回 システムの著作権

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受託開発を行ったシステムにおいて、システムの著作権について質問を受けることがあります。
今回はシステムの著作権についてお話ししたいと思います。

著作権はご存じのとおり、「著作権は著作物を創造したときに自然発生し、権利は著作者が有する
知的財産権です。
実はプログラム(アプリケーション、ソフトウェア、情報システム)にも著作権(著作権法 10条)があり、
所有者は次の通りとなります。

●市販のソフトウェア ...開発会社が所有、購入者は複製の使用権と所有権を得る
●フリーソフト    ...作成者が所有
●受託開発のプログラム...契約書の記載に従う 記載がなければ開発会社が所有する

受託開発を行ったシステムにおいては、発注元は自分たちがお金を出して開発したプログラムには自社の
ノウハウがあり、競合他社にプログラムを利用されれば自社のノウハウが流出してしまうのではないかと考え、
著作権を持ちたいとする企業があります。(因みにノウハウやアイディアに著作権は発生しません)
一方、開発元は予め再利用可能な部品を用意して開発する傾向があり、他のシステムにも利用して効率的に
開発を行いたい、またシステムの横展開を考えていて著作権の譲渡は行わないのが一般的です。
発注元が著作権を取得したいときには、契約書に著作権を譲り受けるための条項を盛り込む必要があります。

では、契約はどのように作成すればよいのでしょうか。
著作権の帰属について、平成19年に経済産業省が「情報システム モデル取引・契約書」の中で案文を公表
しています。 以下は、著作権の帰属についての抜粋です。

著作権の有効活用とユーザの競争力の保持とのバランスから、モデル契約書(第45 条)において、ベンダに
すべての著作権を帰属
させる場合(【A 案】)、汎用的な利用が可能なプログラム等の著作権をベンダへ、
それ以外をユーザに権利を帰属
させる場合(【B 案】)、汎用的な利用が可能なプログラム等の著作権を
ベンダへ、それ以外を共有
とする場合(【C 案】)の規定を用意するとともに、両案共通にモデル取引・
契約書において下記の措置を講じた。
① 著作権を含む知的財産権の帰属について、契約書締結前のプロポーザル・見積段階において、事前に提案・
    見積条件として説明する。
② プログラムに関する著作権について、ベンダが将来のソフトウェア開発に再利用できるように、同種の
    プログラムに共通に利用することが可能であるプログラムに関する権利(ベンダが従前より権利を有し
    ていたもの及び本件業務により新たに取得したものを含む。)及びベンダが従前から保有していたプロ
    グラムに関する権利は、ベンダに留保されるものとする。ベンダは、契約に定める秘密保持義務に反し
    ない限り、他のソフトウェア開発においても汎用プログラム等を第三者に許諾し、又はパッケージ化し
    て販売することを可能とする。
③ ユーザは、秘密保持義務の及ぶ範囲を明確化する。
④ ベンダの秘密保持義務は、情報システム構築後の関連プログラムの権利の再利用にまで及ぶものであり、
    秘密保持義務が優先されるものであることを明確化する。

ソフトウェアの有効活用を推進するためには、著作権の経済的価値に見合う対価を踏まえて取引条件を決定
することが必要である。例えば【B 案】による場合、著作権の移転(同種のプログラムに共通に利用するこ
とが可能であるプログラムに関する権利を除く。)に見合う対価を別途支払う、あるいは当該対価を委託料
に含ませる
こと(注1)として、ベンダに著作権を留保する場合に比べて委託料を高く設定するといった形態が
考えられる。

このモデル契約において、「ノウハウの流失防止=著作権のユーザ帰属」ではなく、機密保持義務を課すこと
で防止を図れるし、開発元に著作権を帰属させることで、社会的な生産効率の向上(パッケージ化、共通モジュ
ールの再利用等)とともにプログラムの部品化、標準化等により情報システムの信頼性向上を図ることが可能
なるとしています。
モデル契約の詳細はモデル取引・契約書<第一版> をご覧ください。

著作権の譲渡で、もう一つ注意しなければならないことがあります。
システムをリースによって導入する場合です。
リース契約は開発元とリース会社で契約を締結します。著作権が開発元にある場合、発注元はシステムの使用権
を得て、リース期間内でシステムを使用することができます。リース期間が切れれば使用権も失効します。
リース契約を延長するときは開発元の承認が必要です。(開発元が承認しなければ延長できません。)
では著作権を発注元に譲渡する場合はどうでしょうか?
実は著作権はリース会社が所有(注2)することになり、発注元は著作権を所有しない時と同様で、リース会社の
所有するシステムの使用権を得て、システムを使用します。

著作権については、何故著作権が必要なのか、著作権の譲渡を受ける際の対価は見合うのか、著作権の譲渡を行
わないときの制約(機密保持、プログラムの再利用、開発元の倒産時の対応...等々)を検討し、開発元と協議
してください。

注1)著作権を譲渡または二次使用を制限する場合、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」とみなされる恐れが
        あるため、その対価を支払う必要があります。
注2)開発元とリース会社で別途譲渡契約が必要で、契約書に翻訳権、翻案権等(著作権法 27条)と二次的著作物
        の利用に関する原著作者の権利(著作権法 28条)の規定されている権利が特載されていなければ、著作権は
        開発元に保留されたと推定されます。
        ※出典 リース事業協会「プログラム・リースをめぐる法律問題」