第49回 「“天地人”と現代社会」

今年のNHK大河ドラマ“天地人”が好調のようですね。私も時間が合えば観ています。
先日、会津若松市や米沢市でドラマに出演している俳優さんたちとの交流会が催され、
定員をはるかに超える盛況ぶりだったようです。まさに“イケメン不況知らず。”

今回は“天地人”から現代社会をみてみようと思います。

直江兼続の時代は、情報入手が困難だったことにより、数少ない情報から世の中の動きを
判断しなければなりませんでした。
相手の過去の動きから今後を予測し、その予測に対し自分たちはどう行動するのかを決定してゆきます。

当然、現代のようにはいきませんから情報にはタイムラグがあり、それを踏まえた上で情報を分析しなければならない。
先が読めなければ戦略は後手後手になり、役に立たなかったことでしょう。

時に自身の家臣を犠牲にしながらも上杉家と言う企業を守り、繁栄させるための戦略を実行していきます。
が、残念なことに兼続は武運に恵まれていなかったように私は思います。
魚津城の戦いと関ヶ原の戦いで緻密な戦略を実行しますが、味方との連携がいずれもかみ合わず思惑通りにはいかなかったようです。

兼続は分析力だけでなく、交渉力も持ち合わせた知将でした。
関ヶ原の戦いで敗れた後、上杉家を存続させるため奔走します。
そこでも徳川方のライトパーソンを見極め、お互いの腹積もりを探りながら、ギリギリのところで譲歩する。
俗に言う“落とし所”がピタリとはまり、上杉家は生き延びることとなります。

そして、百二十万石から三十万石に減らされても家臣に暇(現代で言うリストラ)を出すことなく米沢に移封します。
また家臣もこのような状態の上杉家を見捨てず、ついて行く。主君と家臣の信頼関係がきちんと成り立っていたから、ついて行ったのではないでしょうか?
兼続は主君と家臣のパイプ役を務め、そこに兼続の“慈愛”の精神があったからできたことなのかもしれません。

この敗戦後の上杉家の状況、今と似ていますね。
“天地人”の物語の中から現代の問題点が見えてくるように思います。
いくつか取り上げてみようと思います。

各企業は世界的金融不安から業績が落ち込み、企業を守るために正規雇用・非正規雇用社員を問わずリストラしていますが、これは人を人として扱わず“モノ”としか見ていない証拠。
日本はいつの頃からか利益至上主義が蔓延し、企業体質が完全に変わってしまったように思います。
以前は新規採用から企業人として教育を行っていましたが、成果主義の導入で教育の必要のない中途採用が多くなり、結果、企業文化の継承がなされない状態に陥っています。

また人も自分の利益を優先させているように思います。
就職で企業を選択するとき、その会社の本質を見ず、目先(給料・休暇などの条件面)のことばかりに囚われて選んでいるように感じます。
だからでしょうか?一昔前のように、会社に対する愛情も想いも薄いように思います。
これでは会社が倒れそうな時、サッサと逃げるだろうし、会社も切ってしまうのも当たり前のような気がします。
いずれにしても企業も人も信頼が保てなければ存続はしないと私は思います。

それとは別に、いまの世の中、本当の“大人”が少なくなっているような気がします。
年齢を重なれば自然に大人になると勘違いをしている人たちが多く、大人になるには努力が必要なのですが、それにさえ気づいていないように思います。
そうなってしまった原因のひとつに教育の仕方に問題があるのでは?
与えるだけの教育で、しかも受験に必要とされるものだけを一方的に押し付けている状態です。
与えられるから、自発的に学ぼうとする意欲が育たなくなってしまいます。
ですから、社会人になっても、わからないことは「教えてくれるのが当たり前」。
自分から考えることをしない人たちがいっぱいです。
情報・知識は十分にあるのに、活用(分析・評価・予測・提案)ができない。
これでは、危機的状況において生き抜くことは難しいと思います。
難しい状況において、あきらめないことと、生き抜くための知恵を使うことが重要だと、改めて考えさせられました。

“天地人”(火坂雅志著NHK出版)の帯に「閉塞的な状況に陥った平成の世のどこに、直江兼続のように風穴あけてくれる快男児がいるだろうか。
そして、今の政治家、官僚、役人の中に慈愛の心を持って大衆を救おうとする者のあるや否や…」とあります。

上杉謙信から受け継いだ“義”と自分自身の信念である“仁愛”を持って上杉家を守り抜いた兼続。
こういった人物に光が当たるというのも頷けます。


発言者:(S.E.)A

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