第24回 電話加入権

また台風が接近しています、暑かった夏が過ぎたと思ったら、9月の半ばから台風ラッシュとなりました。今までは、週末を狙ったように上陸していた台風も、今回は、平日に日本の本州を直撃しそうです。

さて、平成16年10月19日に総務省の諮問機関、情報通信審議会は、NTTの固定電話加入時に必要な施設設置負担金(電話加入権)について、NTTの経営判断で廃止することを容認する答申をまとめました。早速、NTTは、電話加入権を平成17年4月から、現在の72千円から半額程度に引き下げる方針を固め、その後段階的に値下げし、平成22年までに完全に廃止する方針で調整しています。日本テレコムやKDDIが電話加入権の不要な割引固定電話サービスを始めるため、NTTも早めに対応する必要があると判断したものです。生活の必需品携帯電話も登場した当時は、加入時には固定電話に加入する際に必要な電話加入権と同程度の費用である新規加入料(工事負担金)と契約事務手数料とが必要でした。ところがこの携帯電話の加入料は、72千円→45.8千円→21千円というように段階的な値下げをへて平成8年12月1日から無料となりました。

電話加入権は、専門業者を通じて譲渡や質権設定が可能であり、行政が税金滞納者の電話加入権を差し押さえることもあるので我々にとっては「回収可能な財産」としての意識が強いと思います。事実、税法上も、電話加入権は、減価償却しない資産とされ、会社は、貸借対照表の無形固定資産に計上しており、その総額約1兆2千億円(1,700万件)を償却するとなれば、法人税の税収にも大きな影響をあたえることになります。ところがNTTは、電話加入権を「電話整備網のための工事負担金である」として払い戻しには応じない構えで、その場合、電話加入権は紙くずとなります。今後、加入者側が損害賠償などを求めることも想定されるのでNTTも今回の決定については十分時間を掛けて説明する等慎重な対応が求められます。携帯電話の加入料の場合も同様の損害賠償請求訴訟が起こりましたがNTTが勝訴した模様です。

会社の会計の取扱に限定すれば、現状、電話加入権は、当初取得した1件当たり72千円の取得価額のまま貸借対照表に計上しています。しかし実際には専門業者の売買価格を見れば1万円から2万円前後でしか取引されておらず、時価が取得価額の2分の1以下に下落しているのですから「強制評価減」を適用し評価損を計上すべきだったのかも知れません。これは明らかに貸借対照表の資産査定の問題です。この電話加入権以外にも、 有形固定資産や有価証券等にも多額の含み損を持ったまま事業経営を行っている会社が日本にはたくさんあります。その場合には、会社の時価ベースの貸借対照表を作成してみなければ、会社の本当の実態が分かりません。

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