第22回 事業の集中

早くも3月になりました。1月は私が原稿の作成を忘れ、2月があっという間に終わってしまい、2ヶ月間も原稿の掲載が延びてしまいました。

さて、世間ではBSE鳥ウイルスの話題でもちきりですが、アメリカのBSEの影響をまともに受けたのが、吉野家、松屋等の牛丼店ではないでしょうか。店の店頭から牛丼が消えてしまい、否応なしに牛丼に代わる新メニューが必要になりました。外食産業は従来から牛丼など特定の食材に偏った商品構成にはリスクが高いとの認識がありましたが、実際にアメリカからの牛肉の供給がストップしただけで、消費者に商品が供給できないほどの影響を与えるとは、誰も想像できなかったかもしれません。

このような特定の商品に偏った会社は別に珍しいことではなく、特定の地方公共団体の公共工事に過度に依存した建設会社は、その地方公共団体の長が選挙で変わったとたんに公共事業の受注が激減します。また特定の得意先の売上がそのほとんどを占める会社は、その得意先が倒産したとたんに連鎖倒産に巻き込まれることになります。これらの事例は、会社の経営において特定の得意先に過度に依存すること自体が経営上のリスクがあることを示しています。従来から特定の得意先に依存した経営の危険性については様々な機会で耳にしましたが、特定の仕入先に頼った場合にも、その商品の供給がストップすることにより経営上のリスクが存在することを、今回の米国産牛肉の輸入禁止措置は物語っています。

これらの事業の過度の集中について、アメリカの会計基準では、特定の得意先、仕入先、特定の事業等に過度に依存している会社は、その決算書にその事業の概況や、どのような事業の集中があるのかを記載しなければなりません。日本の上場企業等が従わなければならない会計基準にはそのような注記はまだ必要ではありませんが、今回の吉野家の状況等を考えれば、将来会社の経営に重要な影響を与える情報だと思います。

ただし今回の米国産牛肉の輸入禁止措置は、会社側にとっては、「脱・牛丼」の絶好のチャンスなのかもしれません。従来から外食産業は、生活に欠かせない食を扱っていたことから「不況に強い産業」といわれ、牛丼に代わる新商品の開発に積極的ではありませんでした、今回の米国産牛肉の輸入禁止措置により是が非でも新商品の開発を行わなければならなくなりました。

従来、牛丼は他社の商品との差別化が図れないので付加価値(もうけ)の高い商品ではなく、価格競争によりお客を呼ぶしかありませんでした。絶えず新商品を開発することにより社内の活性化が図れ、他社との差別化により付加価値の高い経営が行われると思います。

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