第17回 財務諸表

8月もお盆だというのに、今日は雨、しかも気温は、10月中旬とのこと、いったい日本の夏はどこへ行ってしまったのでしょうか。一方、ヨーロッパでは、猛暑が続きスイスの氷河が大量に溶け出しました。全世界的な気象異常です。

最近、日本道路公団(JH)のように、その財務諸表が会社の存続に大きな影響を与えるようになりました。財務諸表は、もともと、決算に当たって、企業が外部の利害関係者に対して、その業績等を報告する為に作成する計算書類です。

JHの場合、以前に建設された高速道路については、建設時の資料が無い(?)ので、その固定資産の金額の決定と建設中の借入金利子を固定資産の取得原価に加えるべきかどうかで、債務超過とそうではない財務諸表が作成された為、一体どちらの財務諸表が正しいのかという問題になりました。

なぜこのような問題が起こるのかというと、財務諸表自体が、その作成過程で様々な判断により作成される為ということができます。本来であれば、事業の採算は、事業開始から終了までの収入から支出を差し引くことにより判断できます。ただし、一般の企業の場合、その企業が永遠に継続するもの、すなわち継続企業と仮定し、その継続する活動を一定期間(主に1年)に区分して決算を行います。その過程で、固定資産の減価償却等を採用しますが、その減価償却の方法も定額法と定率法等があり、採用する方法により利益の方法が大幅に変わります。

借入金の利息は、会計理論上は、財務費用としてその期間の支払利息として処理することが原則であり、固定資産の取得原価には算入しません。しかし、次の2つのことを条件として、そのような場合に限って、借入金の利子を固定資産の取得原価に含め減価償却することが認められます。

(1)借入資金が当該建設工事だけに使用されたことが明らかであり、それ以外のものに使用されていないこと。
(2)建設工事が完成するまでの期間に関するものに限ること。稼動後は支払利息として処理する。

たとえ、借入金の利子を固定資産の取得原価に算入しても、継続的に同じ会計方針を採用することにより、結果的に同じ結果になります。

企業が、財務諸表を作成する過程で、影響額を考慮しながら会計方針を決定することはしばしば見受けられます。ただし今回の場合は、その差異が大きい為どちらがJHの本来の実態を表す財務諸表なのかが問われています。一般の企業ならば、企業の存続が危うくなりかねない話ですが、当事者には、あまりその重要性がわからないようです。ただし、この問題が表面化したことで、財務諸表の位置づけ、その見方、資産の評価の考え方等が議論されたことと、JHの経営見直しの必要性が浮き彫りにされたことは画期的なことだと思います。

お問い合わせ方法について

お電話・FAXでのお問い合わせ

024-963-2150 024-959-1111
受付時間 9:00~18:00(土・日・祝祭日、弊社規定の休業日を除きます)

オンラインからのお問い合わせ