第45回 国の借金

久しぶりの更新となってしまいました。約1年ぶりでしょうか。

さて、先日NHKで、「862兆円借金はこうして膨らんだ」という番組を放送していました。862兆円とは、今年度末に日本が抱えている借金で、国と地方を合わせた数字です。GDP比180%と先進国の中で突出した借金ですが、なぜこれほどまでに借金を積み重ねてしまったのか、日本の借金体質がどの時点で発生し、そしてそれがなぜ今も続いているのかを検証したものでした。その背景について財務省幹部が綴った内部文書をNHKが入手したものです。しかし当時の大蔵省幹部は、退職時に自分たちが関わった財政政策について証言録を残しているとは驚きました。これだけ客観的に日本の財政が分析できているのであれば、なぜここまで借金を増大させてしまったのか不思議でした。
当時、大蔵省内部では、赤字国債の発行は「麻薬」と呼ばれていました、日本の財政法の建前は赤字国債の発行を禁止し、社会資本が後世に残るという理由から建設国債だけを許容していました。赤字国債の発行を禁止したのは、戦前・戦中の財政がこの赤字国債の発行で賄われ、最終的には異常なインフレーションをもたらしたためでした。現在の日本の財政を見れば、歳入が40兆円を切るのに対して、一般会計の歳出は優に90兆円を超えています。単年度だけでも約50兆円の歳入不足となり、その不足分を赤字国債の発行に依存している異常な状態です。

ここまで赤字国債の発行を続けた要因は、国内政治国際政治(外圧)と考えられます。特に、今も問題になっている福祉予算が赤字国債発行の原因と大蔵省の幹部が告白していました。福祉関連予算が急激に伸びたのは、田中内閣の当時であり、年金の物価スライド制の導入と老人医療費の無料化を行ったために福祉予算が一気に30%近く増額になった時でした。田中内閣は、福祉予算を増大しただけではなく、列島改造論を旗印に建設関連予算も増額させました。その後発生したオイルショックにより税収が大きく落ち込み、その不足分を埋めるため赤字国債の発行が必要になりました。当時の大蔵省幹部の証言には、「財源の裏付けのないまま、高度成長が続くものと想定して、福祉制度を導入したのが失敗だった」と言っていました。この増え続ける福祉予算の財源として当初考えられていたのが再び高度成長を取り戻し、税収を増加させることです。そのため大幅な財政政策による歳出予算を作成しましたが、既に経済の高度成長は終了しており税収の増加は見込めませんでした。その後、消費税の導入にも失敗しさらに赤字国債の発行が増大しました。またアメリカはクリントン政権時に、対日赤字の解消のため、日本の輸入が増大するよう内需拡大の増大を求め、財政支出による歳出がさらに増大していきました。

歴史は繰り返すといいますが、財源の手当てができないまま、予算が作成されるのは今導入されている「子供手当て」も同じです。結果的にまた国の借金が増えていくことになります。財務省の幹部も退任時に言いたい放題言うよりも、在任中に歳出の削減に着手し財政の建て直しをしてほしいところです。

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