第14回 「早い選抜」と「遅い選抜」
アメリカの大手企業では、学校卒業後に新卒で入社した社員は、30歳前後になると結構な比率で「もう、この会社にいても未来はないよ」と通告されるらしい。
冷酷なようだが、「人生はこれから長い。だから、できるだけ早めに、この会社以外で活躍できるフィールドを探そう」というアドバイスとも言えそうだ。
日本の大企業は、入社した社員が若い時は大きな差が出ないようにして頑張らせ、中年になってからポストと報酬の差を大きく広げる。
一般的に、会社からは社員に「もう部長にはなれない」という明確な通告はない。私が勤めていたメガバンクでは、40歳を過ぎると、通称「たそがれ研修」という第2のキャリアの過ごし方を指導される研修に招聘される。通告の代わりに、自分の社内の位置づけを自己認識してもらおうということだ。
できるだけ長く社員同士を競わせ、40歳以降は納得して仕事をしてもらうための、これらの慣行は、法律で社員をレイオフ(解雇)できない日本の大企業が考え出した苦肉の策なのかもしれない。
しかし大企業の中で、その企業独自仕様のガラパゴス人材の中年になってからの年齢ではもう引き返せないし、転職も難しい。
なので、日本の大企業では「倒産しない以上、出世はしないけれど、しがみついていれば死にはしない」という状態になりがちです。それが結果的に「中年男性の7割が人生つまらない」という調査結果が出てしまうんだろーなと思います。
日本の大企業に、疲れた中年サラリーマンが多い理由はたぶん、これですね。
正社員でもレイオフを行うアメリカと、定年まで法律で雇用が守られる日本、働く人にとってどちらが幸せなのか、判断が難しいところです。
