第25回 マイナンバー その1
2013年5月にマイナンバー法が成立、2015年10月から各個人へマイナンバーの通知が始まり、2016年1月から
利用が開始されることはご存じだと思います。先日マイナンバーの指導者育成セミナーを受講してきましたので、
今回は民間事業者を対象としたマイナンバーの取扱についてお話ししたいと思います。
○おさらい、マイナンバーとは
日本国内の全住民に通知される一人ひとりに割り当てられる12桁の個人番号、生涯にわたって使うもので、
>①公平・公正な社会の実現②国民の利便性の向上③行政の効率化が目的です。
法人にも1法人に1つ13桁の法人番号が割り当てられます。(但し個人事業主は対象外です)
詳しくは政府広報オンラインサイトの解説動画またはパンフレットをご覧ください。
○民間企業の取扱いの基本
2016年1月以降、税や社会保障の手続き(源泉徴収票、健康保険・厚生年金・雇用保険など)で従業員の
マイナンバーの記載が必要となります。※契約社員、パート、アルバイトも含みます。
手続きによっては従業員の扶養親族のマイナンバーも記載します。
マイナンバーには個人情報が含まれるため、特定個人情報保護委員会が作成したガイドラインに従って
適正に取扱わなければなりません。
マイナンバーの運用については以下の通りです。
- ①提供
- 1.利用目的をきちんと明示する
→法律の範囲内で何に利用する(「源泉徴収票に記載します」など)のかを明示- 2.本人確認を厳格に行う
→なりすましを防止するため運転免許証やパスポートで確認
※従業員の扶養親族の本人確認は従業員が本人確認を行いますが、国民年金や第3号被保険者の届出には
扶養親族の委任状が必要となります。 - 2.本人確認を厳格に行う
- ②利用・提供
- 1.法律(マイナンバー法)で定められた範囲でのみ利用 →主に役所に提出する書類に記載
※マイナンバーを社員番号や顧客番号として使ったり、また提出する書類以外にマイナンバーを記載した
書類を保管してはいけません。
- ③保管・廃棄
- 1.従業員の雇用が継続されるときは保管できる
- 2.所管法令によって保存義務がある場合は期限まで保管する
- 3.不要になったら速やかに廃棄する
※廃棄は復元できない焼却処分が望ましい(シュレッダーは復元可能なため廃棄には不向き) - 2.所管法令によって保存義務がある場合は期限まで保管する
特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)サイトをご覧ください。
○マイナンバーを利用するに当たり準備すること
①基本方針の策定
→組織としてマイナンバーにどのように取り組むかを規定する方針
②取扱規定の策定
→事務の流れとマイナンバーの取扱いルールを策定する
マイナンバーの責任者と取扱い担当者を明確にする
③安全管理規定
→マイナンバーの取扱いについて就業規則に明記する、社内環境を整備する、取得・利用・廃棄の
記録をつけるなど
④従業員教育
→「マイナンバーについて」と「自社のマイナンバーの取扱いについて」従業員に周知、理解させる
※①~③は文書化する必要があります。
○マイナンバーの注意事項いろいろ
①マイナンバーの提供は拒否できます
拒否された場合、書類に未記入の理由書を添付しなければなりません。
そうならないために就業規則にマイナンバーの提供について明記しましょう。
②本人確認は国税庁呈示で定められているもので行います
運転免許証、パスポートなど写真付の身分証明書が本人確認書類として認められています。
履歴書は本人確認の書類に該当しません。
③本人の同意がなければ出向・転籍先にマイナンバーの情報を提供してはいけません
④本人へ交付する源泉徴収票にはマイナンバーの記載は不要です
改正前は源泉徴収票の本人控にはマイナンバーを記載するとされていましたが、2015/10/2の所得税施行
規則等の改正で個人番号の記載は行わないことに変更となりました。本人宛の支払調書も同様です。
※税務署提出用には記載が必要です。
⑤マイナンバーそのもの以外にも廃棄を忘れないで
マイナンバーの情報が残っている機器(例えば複合機)を廃棄するときには、機器内の情報を必ず消去
してください。
⑥罰則規定があります
マイナンバーを理由なく提供したり、漏洩(適切な安全策を講じていない)、盗用、虚偽などには懲役や
罰金などの罰則が規定されています。懲役には執行猶予はなく実刑となります。
既にマイナンバーの通知が始まり、準備段階から実務段階へと移行する時期ではありますが、準備が進んていない
事業者が多く見受けられます。この機会に是非とも準備を進めていただきたいと思います。