第29回 軽減税率導入 ~インボイス~


今回の税制改正大綱では、事業者の納税額を正確に把握するため、税率や税額を記載する請求書「インボイス」を
軽減税率の適用から4年後の2021年から導入することが盛りこまれました。
インボイスは貿易業務では不可欠の業務ですが、一般的にはあまりなじみのない業務ですね。
インボイスとは何か?どういった業務を行うのか?についてお話しします。

インボイス(invoice)とは
簡単に言うと販売者が購入者へ発行する伝票に、数量、単価、金額、適用税率、税額などを明記することです。
現在は伝票や請求書に税額を纏めて記載する帳簿方式が取られていますが、インボイスは商品毎に記載します。
今までは税率が一律でしたので、合計金額だけで消費税の納税額が算出できたのですが、軽減税率の導入に伴い、
商品毎に税率が異なってきます。そのため個別に税額を計算しないと全体の納税額が計算出来なくなるので、
インボイスを導入して対応しようというわけです。

何故インボイスが必要なのか
消費税は消費者だけでなく、各事業者間の取引でも課税されます。各事業者は販売して得た消費税から仕入などで
支払った消費税を差し引いて納税しています。(仕入納税控除方式
消費税法で「課税事業者(買い手)は、課税仕入れ等の税額控除を受けるためには、課税仕入れ等の事実を記録した
帳簿及び請求書等を保存しなければならない
」と定められており、請求書や帳簿に記載された税額が
仕入税額控除の根拠となっています。
ところが、消費税は納税を免除(免税点制度)されたり売上からの納税額を概算計算すること(簡易課税制度)が
認められていて、一部事業者の手元に残ります。手元に残った税額は「益税」と呼ばれています。
消費税は自己申告のため、複数の税率になった場合に「益税」が増加する、または不正(正しく納税しない)の
温床になるという懸念が出てきています。
インボイスを導入すれば、個別に税額を記載する義務が生じ、不正ができにくくなる、また不正を発見しやすくなります。
今回の導入では不正な請求書を発行すると罰則が設けれるようです。インボイスの導入は不正防止だけでなく、
税額の取りこぼしをなくすといった意図もあるようです。
因みに、インボイスは原則として"「適格請求書発行事業者」として登録済の事業者が発行した請求書類でなければ、
仕入税額の控除を仕入税額控除を受ける事ができない
"とされています。

インボイス導入に伴う対応
インボイスが導入されるとる次の対応が必要になり、事務負担の増大は避けられない状況です。
    1.適格請求書発行事業者の登録を行う
        所轄の税務署に申請書を提出し、適格請求書を交付することができる事業者として登録を受ける手続き
    2.インボイスに対応するための「しくみ」や「システムの変更」を行う
        請求書および領収証に税率ごとの税額や事業者識別情報(上記で交付された登録事業者番号)等の記載を追加
        課税事業者と免税事業者の請求書の仕分け
    3.インボイスの保存
        請求書を発行者と受領者の双方で保存しなければならない

インボイス導入の経過措置
インボイスは軽減税率の導入2017年4月1日から2021年3月31日までの4年間、経過措置が設けられています。
経過措置の内容は
    ・現状の請求書等保存方式を維持する
        ただし、軽減税率対象品目がある場合には「軽減対象であること」と「税率の異なるごとに合計した対価の
        額」を請求書、帳簿に記載する
    ・ 税率の異なるごとに売上や仕入を計算することが難しい場合、簡便な計算方法が認められる
        (2018年3月31日まで)
のとおりです。
また、免税事業者からの仕入についてはインボイス導入後の2021年4月1日から2027年3月31日まで、
    ・免税業者から仕入れた場合仕入税額相当額の一定割合を仕入税額として控除できる
        2021年4月1日から2024年3月31日まで仕入税額相当額の80%
        2024年4月1日から2027年3月31日まで仕入税額相当額の50%
という経過措置が別途設けられています。

消費税が初めて導入された1989年、既存のシステムへ消費税機能の組込みはできるだけ工数のかからない方法で
行い、新たなシステムへは税率が変更になることなどを考慮して構築しましたが、今回の軽減税率とインボイスの
導入に係る情報システムの対応は、税制を十分に理解した上で取組む必要があります。

参考国税庁パンフレット

<補足>
    免税点制度...課税売上額が1,000万円以下(年間)の事業者は消費税の納税義務が免除されている
    簡易課税制度...課税売上額が5,000万円以下(年間)の事業者に適用されている

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